あの脱輪事故から学ぶ、整備の“抜け”が招くリスク。タイヤ交換後の「増し締め」は命綱

1. ニュースで見た「あの事故」は、なぜ起きたのか?

「走行中の車のタイヤが外れ、歩行者に直撃」 近年、このような痛ましい事故のニュースを耳にする機会が増えたように感じます。特に、雪国ではスタッドレスタイヤへの交換時期に、このような脱輪事故が多発する傾向にあります。

ニュースの向こう側で起きた、まるで遠い世界の出来事のように思える事故。しかし、その原因は、私たちドライバーが日頃から行っている「タイヤ交換」という、ごく身近な作業に潜んでいるかもしれません。

今回のカズローガレージでは、ニュースや事故報道が示唆する、整備の「抜け」が招くリスクについて深く掘り下げます。特に、タイヤ交換後の「増し締め」という、たったひとつの作業が、いかに私たちの命を守る命綱となるかを解説します。


2. なぜタイヤは外れるのか?増し締めを怠ることで起きるメカニズム

タイヤ交換後、ホイールナットが緩む原因は、主に以下の2つが考えられます。

原因1:ナットの締め付け不足

これは最も基本的な原因です。

  • 手作業の限界: 手作業でのトルクレンチの締め付けが不十分だったり、エアインパクトレンチで締め付けた後、最終的なトルク確認を怠ったりすると、初期の時点でナットがしっかり締まっていない可能性があります。
  • トルクの重要性: ホイールナットは、ただ力任せに締めれば良いわけではありません。車種ごとに規定された「適正なトルク」で締め付けることが非常に重要です。強すぎてもボルトを痛め、弱すぎても緩みの原因になります。

原因2:走行中の馴染み(初期緩み)

タイヤ交換後、走行距離が数百キロに達すると、タイヤやホイールの接合面に「馴染み」が発生します。

  • 馴染みとは?:
    • タイヤやホイール、ハブと接合する面には、わずかなズレや凹凸があります。
    • 走行中の振動や荷重により、これらのパーツが徐々に正しい位置に収まろうとします。
    • この「馴染み」によって、最初に締め付けたナットがわずかに緩んでしまうことがあるのです。
  • カズローガレージ的アドバイス: この「初期緩み」は、プロの整備士でも起こりうる現象です。だからこそ、プロは必ずタイヤ交換後「数百キロ走行後に増し締めに来てください」とお客様に伝えています。この増し締めは、作業者のミスを疑うのではなく、タイヤ交換という作業の特性上、必ず必要な工程だと理解することが大切です。

3. 「増し締め」を習慣化しよう!たった10分の安全確認

増し締めは、自分で簡単にできる、最も重要な安全確認です。

  • 増し締めを行うタイミング:
    • タイヤ交換後、100km程度走行した時点
    • 遅くとも、タイヤ交換後、初めての高速道路走行前
  • 必要な工具:
    • トルクレンチ: 車種ごとに規定された適正なトルクで締め付けるために必須。
    • 十字レンチ、または車載工具のレンチ: ナットを緩める際や、トルクレンチが使えない狭い場所で使う。
  • 増し締めの手順:
    1. 安全な場所に車を停め、平坦な場所でサイドブレーキを引く。
    2. トルクレンチの数値を、車種ごとに規定されたトルク値にセットする。
    3. トルクレンチを使い、ホイールナットを対角線上に順番に締め付けていく。
    4. 「カチッ」という音がしたら、それ以上力を加えない。
    5. 全てのナットを締め付けたら、作業完了。

4. 整備の「抜け」が招くリスクは、タイヤ交換だけではない

脱輪事故は、タイヤ交換後の増し締めという「たった一つの抜け」が、命に関わる事故に繋がることを私たちに教えてくれます。しかし、整備の「抜け」が招くリスクは、タイヤ交換だけに限りません。

  • ブレーキフルードの交換忘れ: ブレーキの効きが悪くなり、重大な追突事故の原因に。
  • エンジンオイルの交換忘れ: エンジンの焼き付き、走行中の突然のエンジン停止。
  • 日常点検の怠り: ライト切れやタイヤのパンク、液漏れなど、小さな異変が大きな事故の原因に。

整備は「お金がかかるもの」「面倒なもの」ではなく、**「自分と、大切な人を守るための投資」**です。 日々の忙しさから、つい点検を後回しにしてしまいがちですが、事故を起こしてからでは遅いのです。

カズローガレージ的アドバイス: 私はトラックを運転する際、毎日の運行前点検を欠かしません。タイヤのナットの緩みは、指で触って確認するだけでも違います。この地道な習慣が、自分と、そして道路を利用する多くの人の命を守ることにつながるのです。


5. まとめ:増し締めは、悲しい事故をなくすための、私たち全員の責任

ニュースで報道される脱輪事故は、決して他人事ではありません。 タイヤ交換後の「増し締め」という簡単な作業を怠ったばかりに、悲しい事故に繋がる可能性があることを、私たちは真摯に受け止めなければなりません。

  • タイヤ交換後、数百キロ走行したら「増し締め」は必須
  • 適正なトルクで締め付けるために、トルクレンチを活用する
  • 整備の「抜け」は、命に関わるリスクに直結する

この機会に、ご自身のタイヤ交換の仕方を見直し、増し締めを習慣化してみませんか? たった10分の安全確認が、悲しい事故をなくすための大きな一歩となるはずです。


6. Q&A:タイヤ交換に関するよくある質問

Q1:増し締めを忘れたことに気づきました。今からでもやった方がいいですか?

A1:はい、気づいた時点で必ず行ってください。タイヤ交換後、時間が経っていても、走行中の振動でナットは緩む可能性があります。特に、高速道路を走行する前は必ず確認するようにしましょう。

Q2:増し締めをプロに頼むことはできますか?

A2:もちろんです。ほとんどのディーラーやカー用品店では、タイヤ交換後の増し締めを無料で、またはごく安価な費用(¥0〜500)で行ってくれます。自分でやるのが不安な場合は、迷わずプロに依頼しましょう。

Q3:スタッドレスタイヤと夏タイヤの交換は、自分でやっても大丈夫ですか?

A3:基本的な手順を理解していれば可能です。ただし、必ず車載ジャッキだけでなく、安全な場所で行い、ジャッキスタンドを使用するなど、安全対策を徹底してください。また、タイヤの向きや空気圧、増し締めなど、注意すべき点が多いため、初めて行う場合はプロに任せることを強くお勧めします。

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