【水場を走るリスク】「どこまで走れる?」冠水路の危険度と安全な判断基準を徹底解説

近年、ゲリラ豪雨や台風の増加により、アンダーパスや低地の「洗い越し」などで、道路が突然冠水するケースが増えています。「この水深なら大丈夫だろう」と安易に考えて進入し、立ち往生してしまう事例が後を絶ちません。

本記事では、JAF(一般社団法人日本自動車連盟)が実施した過酷な冠水路走行実験の結果を根拠に、自動車が走行可能な水深の限界と、やむを得ず走行する際の唯一の方法、そして最も重要な「進入判断の基準」を解説します。


1. 冠水路に進入してはいけない!JAFの実験が示す「水深の限界」

JAFは、水深30cmと60cmの冠水路を、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、ガソリン車(普通自動車・軽自動車)で走行する実験を行いました。この結果は、「見た目より遥かに危険である」という事実を浮き彫りにしています。

運転席から見た水深の目安

水深車体への影響の目安危険度
約10cm〜20cmタイヤの下半分程度(縁石の高さ)。ブレーキ性能の低下や、マフラーからの水浸入リスクが上昇。【注意】
約30cmタイヤの上部、またはドア下端にかかる程度。【非常に危険】
約60cmドアの半分(フロントガラス下端)に迫る。【人命に関わるレベル】

JAF実験結果の衝撃:水深30cmでもダメージは深刻

水深30cm(時速30km)の冠水路を走行した場合、すべての車種が走り切れたものの、以下のような深刻なダメージを負いました。

  • 軽自動車・普通自動車:フェンダーやアンダーカバーが外れる、ずれるなどの車体損傷が発生。
  • 全車種:ボンネット内部に水が浸入し、エアクリーナーが濡れるなどの影響が確認されました。

【教訓】

「走り切れた」=「無事だった」ではありません。水深30cmは、エンジン停止のリスクがある吸気口に水が達する可能性がある危険な水深です。

結論:水深が「タイヤの上部」に達したら絶対に進入禁止

JAFや国土交通省は、一般的に「水深がタイヤの半分(約20cm)を超えたら進入禁止」を推奨しています。

もし水面が「タイヤの上部(約30cm)」に達している場合は、水圧でドアが開かなくなり、電装系がショートするリスクが一気に高まるため、絶対に進入してはいけません。


2. エンジン停止はなぜ起こる?:走行速度による致命的なリスク

「水深が浅ければゆっくり走れば大丈夫」と考えがちですが、JAF実験では速度を上げるほどエンストのリスクが高まることが証明されました。

速度と水の巻き上げの関係(水深60cmの実験)

  • 時速10km:ガソリン車は完走したが、エアクリーナーが完全に濡れた。(後に故障リスクあり)
  • 時速30km:ガソリン車は完走できたものの、車内に大量浸水し、走行後にエンジンが停止。
  • 時速40km:軽自動車が進入直後にエンストし、28.5m地点で停止。車体が浮き、流される危険な状態に。

【エンストの主な原因】

冠水路を高速で走ると、車体が水を勢いよく巻き上げ、エンジンの吸気口(エアインテーク)から大量の水を吸い込みます。エンジンは空気を吸う代わりに水を吸い込むと、内部で圧縮できなくなり、一瞬で停止します(ウォーターハンマー現象)。

結論:やむを得ず走行する場合の鉄則

やむを得ず、どうしても水深が浅い冠水路(水深20cm以下)を走行する際は、以下の鉄則を守ってください。

  1. 速度は極端に落とす:時速10km以下(人が早足で歩く程度)で走行し、波を立てない。
  2. 低速ギアで一定速度を維持:AT車なら「L」や「2」などの低速ギアに入れ、アクセルは一定に保ち、途中で止まらない。
  3. 対向車の波に注意:対向車が作った波が、車の吸気口を直撃しないよう、タイミングを見て進入する。

3. 車が停止してしまったら?:人命を守るための行動

もし冠水路で車が停止してしまった場合、最も危険なのは「水圧でドアが開かなくなること」です。

エンジン停止後の最優先行動

  1. すぐにエンジンを停止する:エンジンが停止しても、再始動は絶対に試みないこと。水を吸い込み、修理不能の致命傷になる可能性があります。
  2. 窓を開け、脱出経路を確保する:エンジン停止直後は電気が生きていることが多いため、すぐにパワーウィンドウを作動させ、窓を開けましょう。水圧でドアが開かなくなる前に脱出経路を確保することが最優先です。
  3. 脱出用ハンマーを使う:ドアも窓も開かない場合は、常備している脱出用ハンマーで側面ガラスを割り、脱出します。

避難時の注意点

  • 水深の確認:車から出る際は、必ず棒などで足元や水深を確認してから、慎重に進んできた方向へ戻りましょう。
  • マンホール:冠水路ではマンホールの蓋が水圧で浮き上がり、穴が開いている可能性があります。水の中は見えないため、一歩一歩確認しながら歩くことが重要です。

まとめ:冠水路を回避するための最終判断

冠水路に遭遇した場合、最も安全な判断は「迂回」です。

走行判断の目安状況推奨行動
水深の判断水面がタイヤの半分(縁石の高さ)を超えている【進入禁止】 エンスト・浸水・ドア開閉不能のリスク大
走行の判断水深が浅く、どうしても走行が必要な場合時速10km以下で低速ギアを維持し、一気に走り抜ける
停止後の判断エンジンが停止した、または水が車内に入ってきたすぐにエンジン停止、窓を開け脱出経路を確保

JAFの実験結果から、現代の車であっても水に対する耐性は非常に低いことがわかっています。命と愛車を守るためにも、「水深が浅そう」という安易な自己判断はせず、常に最悪の事態を想定して行動しましょう。

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